| by Kenneth Chase | 2 comments

町山智浩のVIDEO SHOP UFO『フリービーとビーン/大乱戦』前解説(洋画専門チャンネル ザ・シネマより)


LAにたたずむ1軒のビデオショップ 地元の映画マニアも唸らせる
この老舗には とある日本人名物店長が厳選した
激レア映画がそろっている このマニアックな品ぞろえの中から 今宵も店長 町山智浩が あなたの知らない映画を
自ら選んで紹介してくれる 果たして 今夜は
どんな映画を見せてくれるのだろうか 町山智浩の
VIDEO SHOP UFO いらっしゃい
VIDEO SHOP UFOにようこそ ここはですね 私 町山智浩が 世界中から集めた
いろんな映画のコレクションの中から 特に激レア作品を皆さんに お勧めするという お店ですけれども 今回ご紹介する映画は これです 『フリービーとビーン/大乱戦』です 今夜 紹介する映画は
『フリービーとビーン/大乱戦』 この『フリービーとビーン/大乱戦』
という映画は 1974年のアメリカ映画です 刑事のコンビの話でして ジェームズ・カーン扮する
荒くれ刑事のフリービーと あまりやる気のない
家庭のことのほうが重要になっている 中年刑事のビーン これはアラン・アーキンが
演じますけれども この 何というか熱い熱いデカと やる気のない おっさんデカの けんかを描きながら
事件を解決していくという アクションコメディなんですけれども この映画は とにかく
カーチェイスが凄まじいんです もう70台以上 とんでもない数の車を
スクラップにするんですが もう めちゃめちゃです 車がクラッシュして クラッシュして
クラッシュして クラッシュして どんどん どんどん
パイルアップしていくんですけれども 当時としては 1960年代の終わりに 『ブリット』という
刑事アクション映画で ものすごいカーチェイスがあって その後に『ザ・セブン・アップス』とか いろいろな映画でカーチェイスの
リアリズムが高まっていった中に カーチェイスブームの頂点で これが それを全部ひっくり返しちゃったと もう とにかく でたらめなんですね 特に その車がもう どんどん どんどん壊れていくと
笑うしかないというぐらいの 脱力した笑いに
観客のほうが包まれてしまうんですが これは もう見た人は
分かるんですけれども これですね 『ブルース・ブラザース』の
元祖なんですよ 『ブルース・ブラザース』は とにかく 車がとにかく徹底的に
壊れて壊れて壊れてという それがどんどん どんどん
パトカーとか 積み上がっていくので
笑わせるんですけれども 最初にこの『フリービーとビーン』が
やっているんです もちろん 『ブルース・ブラザース』も
でこぼこコンビの話ですよね だから この
『フリービーとビーン』は 一種その この『ブルース・ブラザース』の
原型でもあります 『フリービーとビーン』の監督は リチャード・ラッシュという人で この人はハリウッドの異端の人ですね ハリウッドの外側で ロジャー・コーマンという
独立プロの下で 暴走族映画の
『ヘルズ・エンジェルス』ものとかを いっぱい作っていた人ですけど この人はハリウッドの
流れではなくて むしろ フランスのヌーヴェルヴァーグの影響を
非常に受けていた人です その人が なぜ突然こんな カーチェイス・アクションコメディを
作ったのかというと 彼自身がインタビューで
答えているんですけれども その当時のベトナム戦争であるとか
刑事映画ブームであるとかの 町なかで行われている
バイオレンスそのものを 茶化したかったというふうに 後にインタビューで語っているんですね こういうふうに言っています 観客は笑いながら 笑っているうちに 自分が笑っていることに ぞっとする そういう映画を撮りたかった
と言っているんですよ まるで お化け屋敷に行くと 鏡があるんですね
歪んだ鏡があって そこに行くと 自分の歪んだ姿が映るという
鏡があるんですけど それのような効果を狙って作った映画だ
と言っているんです 何それ? という感じですが この映画は 事件を追いかけていて 悪いやつもいるんですけれども ナンバーズ賭博をやっている
やくざたちがいるんですが その話は どこかへ行っちゃうんです とにかく この刑事2人が 犯人を追いかけるために
徹底して町中を破壊し尽くすんですね 舞台はサンフランシスコですけれども これは僕が住んでいる所なので 知っているところは
いっぱいあるんですけど まあカーチェイスがひどい ひどい 例えば 白いバンが すごい高い所から飛んで落ちる
というシーンがあるんですけど 落ちてグシャッとなるところで そのわずか2メートルぐらい離れた所に
人がいるんです その人のすぐ横に
ボンと落ちるんですよ 車が これは危ねえだろうというか 当時はコンピュータグラフィックスとか
ないですから 本当にそうやっているんです そして人が はねられるシーンも
ものすごく多いです 普通のアクション映画とかの
カーチェイスで 人が はねられるというのは
非常に生々しいから あまり描かないですよね 車同士は
クラッシュするんですけど 人が はねられるというのは
やらないですね この映画は やります
しかも はねるのは刑事です 女の子を はねます パレードをしているチアリーダーを
はね飛ばしますよ 刑事がですよ とんでもない映画なんですよ
この『フリービーとビーン』というのは これは笑えない ぞっとするんですよ それは 監督の望んだところなんですね 非常に見ていて
複雑な気持ちになる映画です しかも カーチェイスはすごいです 本当に最高のメンバーがそろっていて 20人か30人ぐらいの スタント・ドライバーたちが集まって その当時の限界に挑戦しています 途中のバイクアクションとか
本当にすごいですよ ちなみにバイクアクションの
ところですけど 本当のスタント・ライダーの イーブル・クニーブルも
ノンクレジットで出ていたりするんです 意味があるのかと思いますが はい これは いかにすごいかというと その後 80年代になって
やっと作られていく 大量破壊アクションコメディを
やっちゃったんですね こういうバディアクションもの
相棒アクションものは 1970年に
『ロールスロイスに銀の銃』が 相棒刑事アクションコメディという道を
切り開いたんですけれども その中でもカーチェイスで
町中を巻き込んで めちゃめちゃにしていくことを
お笑いとして描いてはいるんですが 規模が小さかったです 『フリービーとビーン』は
それを100倍ぐらいの規模でやる しかも非常に残虐な で 見ていて困っちゃう ヒーローが女の子をはねる どう思ったらいいのか
このヒーローを応援できるのか というところで
非常に困ってしまう映画なんですね しかも はねる男が
ジェームズ・カーンですよ ジェームズ・カーンといえば
『ゴッドファーザー』その他の映画で 女を殴ったりしている人ですよ 暴力男の役ばかりやっている人ですよ 現実にも実生活でも やくざとのつきあいが多くて
という人なので ほんまもんの人ですからね
この人はね まあ そういう人が
こういう役をやっていると どこまでがシャレなのかが
分からないという 綱渡りのような
非常に奇妙な映画になっています 今は すごく クエンティン・タランティーノは
『フリービーとビーン』は新しかった 見ていてどういうふうに
反応したらいいか分からない あの居心地の悪さというものが
すごかったというふうに 彼は言っていまして クエンティン・タランティーノも
そういうことをやりますよね 笑っていいのか
ぞっとしていいのか分からない 微妙な綱渡りみたいなことを
彼はやり続けている人ですけれども 『フリービーとビーン』に
非常に強く影響されたと言っていますね 僕も公開当時に
劇場で見ましたけれども ポスターとかチラシには “コメディで笑えるよ 痛快だよ”
といっぱい書いてあって 見たら いや これはどういうふうに 思ったらいいのか
分からないよという 非常に奇妙な映画でした まあ 非常にこの 言っちゃいけないので 映画の前に だから あらかじめ言っておきますと 見ていて非常に困る映画です ただ それはあらゆる意味で
監督の狙ったとおりです 監督は センスがなくて モラル的に問題のある監督だから
こういう映画になったわけじゃなくて 観客のモラルに対する挑戦として リチャード・ラッシュ監督は
この映画を撮っています なぜ 俺がこんなに弁護しなきゃ
ならないんだという気もしますけれども 今 見ても非常に問題のある
差別的な描写もあるんですよ そのへんは これ以上詳しく言うと 映画を見る前に
ネタバレになってしまうので言えないですが ある程度 覚悟をしてご覧ください 俺に苦情を言わないでくださいね これは何十年も前に
こういう映画が歴史的に作られたので “町山はこんな映画を紹介しやがって
人間のくずだな”とか 俺じゃないからね これを作ったのはね これを作ったやつがいるんですからね ということで
いろいろと問題のある映画ですが 映画としては すごいですから 『フリービーとビーン/大乱戦』
覚悟してご覧ください

2 Comments

mikawashin990

Oct 10, 2019, 1:30 pm Reply

ジェームズ・カーンとアラン・アーキンの名コンビの隠れた名作。懐かしいなぁ…最後のドンデン返しも面白かった。

シーレ

Oct 10, 2019, 1:44 pm Reply

子供の頃、ゴールデン洋画劇場で観てめちゃくちゃ面白かった記憶があります

吹き替えバージョンもザ・シネマなら用意してますよね?( ◠‿◠ )

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